2曲目 もうひとつの土曜日
白です。
今日も本ではなくて歌にまつわる思い出話を。
感想でもなく、今日は思い出話です。
今回は浜田省吾さんの
[もうひとつの土曜日]
はましょーファンならみんな大好きな曲のはずですが、私の年代だとあまり有名ではないんですよね。この曲、歌詞はもちろん心にしみるのですが、個人的な思い出がたくさん詰まっているのです。
私の父は私が4歳で亡くなっているのですが、そんな父がよく口ずさんでいたこの歌。当時4歳の私が覚えていたのか、それとも誰かから聞いてそれを覚えたのか。ハッキリは覚えていませんが、物心つくころにはよく口ずさんでおりました。ただ、今みたいにネットで検索すぐ聞ける!という環境ではなかったので最初のワンフレーズを延々と繰り返すだけでした。
『昨夜眠れずに、泣いていたんだろう
彼からの電話、待ち続けて』
ここだけです。笑
この曲を初めて全部聞いたのは18歳の時でした。
18歳で母が亡くなり、私は荒れに荒れた生活を始めます。学校にはほぼ行かなくなり、通わせてもらっていた予備校もサボり、成績は落ちるところまで落ちて、高校を中退までしてしまいます。
絵に書いたようなヤサグレ方を謳歌。
そのころに私は、恋愛という脳内麻薬物質を撒き散らす最高の逃げ場を見つけました。心配する家族を無視して、男に依存するという行為に走るのです。最初は同級生の男の子でしたが、幸せな家庭にまっとうな人生を歩む同級生が、羨ましくて、妬ましくて。どんなに優しい言葉をかけてくれても、受け入れることなど出来ず、自身の不幸を外に撒き散らして当たり散らすという、恐ろしい恋愛をしていました。みんなよく付き合ってくれたと思います。
感謝。笑
そして私は同世代の男では満足出来ず、出会い系に手を出すようになります。出会い系で知り合う人は大人で、楽でした。当時楽しかったのかは正直不明ですが、ちやほやされて、気持ちよかったのでしょう。
そんな時に出会った17歳上のこーじさん。私は彼にすっかりハマってしまいます。
外車に乗って夜景の綺麗なスポットへ。
美味しいご飯にちょっといいホテル。
流れ星を見て、君の幸せを願うよ、なんて甘い言葉にすっかりハマってしまうのです。
何度も大人なデートに連れて行かれ。
そして奈落の底に落ちていきます。
当時の私は男のことなど全く知らない、性欲と愛情が切り離されたものであることなど、頭の片隅ですら理解していない子供だったのです。ましてや、こんな可哀想な私に酷いことをする人間なんて家族以外いないに違いない、という大きな勘違いと、根拠の無い自信を持っていたのです。
彼と結婚して私は幸せになれるんだと、本気で思っていました。
ですが、彼には彼女がいました。
ある日突然言われて、でもこれからもこういう関係でいようね!というセフレ宣言を受けるのです。
犯罪です。
でも私は
それでもいいから傍に居たいと願いました。
愚かです。
犯罪者と愚かな子供の本当にどうしようもない下らない時間だったと思います。そしてセフレ宣言を受けてからは完全に彼女を優先され、私は深く傷付き落ち込みます。
そして怖い女へと変貌していきます。
深夜に残す大量の着信。
返信も無いのにメールを送り続ける。
突然の自宅訪問。
彼の駐車場での待ち伏せ。
当然のように彼は逃げました。
そして私は初めての失恋に更に狂うのでした。
眠れない夜。
来ない連絡を待つ夜。
ノートに書き綴るポエム。
更に出会い系で男漁り。
当時の様子を姉はこう語っていました。
『白の後ろに黒い塊がいつもついて歩いていた。』
失恋って怖いです。笑
そして1人フラフラ歩いている時にレンタルCDショップに入って浜田省吾さんの[もうひとつの土曜日]を見つけました。
帰宅後、初めて全部を聴きました。
泣きました。
これでもかというほど、私は号泣しました。
父は私のこの日のために、この曲を歌ってくれていたのではないかと、絶対そんなわけないのに当時は思っていました。娘が出会い系にハマり、17も歳の離れた男にポイ捨てされることを想像する父親がどこに存在するんだとツッコミたいところです。
昨夜眠れずに泣いていたんだろう
彼からの電話待ち続けて
テーブルの向こうで君は笑うけど
瞳縁取る悲しみの影
…
子供の頃君が夢見ていたもの
叶えることなど出来ないかもしれない
ただいつも傍に居て
手を貸してあげよう
受け取って欲しいこの心を
ここで、号泣です。一体自分が何を夢見ていたのかも分かりませんが、一晩中泣き続けました。
その後は色々あって専門学校に通うのですが、やはり挫折して退学。そして私は風俗嬢になりました。
風俗をはじめてから、とあるドライバーさんと出会います。彼は大変寡黙な人でした。そんな寡黙なドライバーさんと、何かのタイミングで浜田省吾が好きだという話になりました。その話をしてからそのドライバーさんは、私が車に乗ると、必ずCDを浜田省吾に変えてくれるようになりました。
さりげなく。
決して私に、どうですか?とか、浜田省吾用意しましたよ!とか言わずに。この曲はあーだこーだとか、そんなことも言わずに。
その無言の車の中で、私は押し付けない優しさというものに触れました。
本当に静かで、優しい時間でした。
風俗嬢とドライバーという、社会から少し切り離されたような二人の、悲しい空間のはずなのに。